アワビなどの漁獲量が激減したのは、日高川上流の椿山ダムから排出される濁質が原因として、美浜町の三尾漁協と組合員58人が県を相手に損害賠償等を求めている訴訟は17日、和歌山地裁で3回目の原告側証人尋問が行われた。今回は海中の光と濁り、濁りが生物に与える影響などを専門とする東京海洋大大学院海洋科学系教授の荒川久幸氏(51)が出廷。磯焼けの原因については水温の上昇や魚による食害は「直接的な要因とは考えにくい」とし、「最も強く作用しているのは(ダムから排出された)海中の堆積粒子」と結論づけた。
 午前中は荒川氏が海藻類の生態、一般的な磯焼けの原因、濁りや堆積粒子が海藻に与える影響などについてレクチャーを行った。午後からの主尋問では、4年前、国の公害等調整委員会が漁協側の磯焼け原因裁定申請を棄却した際の公調委の主張を一部否定し、三尾の磯焼けが回復しない原因は「三尾海域の大雨時の(ダムから排出される)著しい海中の濁りと堆積粒子にあり、他の要因を含めても、最も強く作用したのは堆積粒子だ」などと証言した。
 この日の公判で原告側が申請した証人尋問は終わり、被告の県側は証人尋問を申請しておらず、書証、人証の証拠調べ手続きはこの日で終了。これで双方は主張は出尽くしたことになるが、閉廷後の3者協議では、裁判官から和解に向けての話し合いの提案はなかったという。次回公判は8月下旬。