愛知県で2007年12月、認知症の男性がはいかい中、駅構内で列車にはねられ死亡した事故で、JR側が遺族に列車の遅れなどに伴う振り替え輸送費などの損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が、25日付の一部全国紙に掲載された。判決によると、妻に介護・監督する義務があったとして約359万円の支払いを命じたという。当時、亡くなった男性は91歳、妻は85歳。互いに言い分があるだろうし、法令に従った判決とはいえ、心情的にはあまりにも酷ではないか。過酷といわれる老老介護の新たな課題や問題が浮き彫りになったように感じる。居宅介護がいわれている中、首をかしげてしまう判決だった。
 少子高齢化がますます進むこれから、どこでも誰でも起こりうる問題でもある。和歌山県では65歳以上の人口が28万人を超えており(25年3月末現在)、高齢化率は28%。日高地方では御坊市、みなべ町、日高町が県平均を下回る20%台だが、美浜、日高川、印南、由良町では30%を超えている。これから団塊の世代がますます年を重ね、いわゆる疾病多発年代に突入するといわれている。看護師不足などで受け入れる医療機関が限られている中、居宅介護や居宅医療態勢を整えていくことは、今後の地域医療の要の施策といえるだろう。
 前述のように認知症患者への対応は非常に難しい問題がある。だからこそ、居宅で介護している方々をサポートする態勢をもっともっと充実させなければならない。幸い、御坊保健所管内では医師や薬剤師、介護職、各市町担当者で在宅医療検討委員会が立ち上がっている。市町の枠を超えてよりよい支援態勢を整えてくれることを期待している。  (片)