日高川町鐘巻の道成寺(小野俊成住職)は、同寺で保管していた「紙本著色道成寺縁起」について、明治以降初となる全面解体修復を行う。応永年間(1394年~1428年)に製作され、歌舞伎や能楽で有名な「道成寺物」の源流とも言われる絵巻物。全2巻を26.27年度の2年かけて修理し、全体完成は28年3月となる。
 道成寺物とは歌舞伎・浄瑠璃の一系統で、愛を誓った旅僧安珍に裏切られた清姫が、憤怒のあまり蛇体となってあとを追い、道成寺の鐘の中に隠れた安珍を、鐘ごと焼き尽くしたという物語を題材とした演目の総称。道成寺で保管していた絵巻物は、物語を文字や絵で記しており、「道成寺物」の中心的な絵巻物として国の重要文化財に指定されている。
 江戸時代以前の修理記録は不明。明治以降では2、3回小修理はされたものの製作から約600年が経過し、老朽化が進んでいるほか、汚れも見つかったため、3年前から修理へ向けた取り組みが進められていた。
 今回の修理はこれまでの小修理でなく、3重になっている紙をはがすなどの大掛かりな解体修理。23日には県の職員や業者が訪れ、絵巻物の状態をチェックした。1巻につき1年を見込んでおり、2年に分けて行う。
 小野住職は「修理までの話がスムーズに進み、この絵巻物の重要性や知名度の高さをあらためて感じました。各方面の方々の協力に感謝しています」と話している。完成後のお披露目についても検討している。予算は1250万円で、国、県、町、公益財団法人朝日新聞文化財団から補助が出る。