本紙創刊85周年記念御坊弁俳句大会審査がこのほど行われ、6点の入賞作品が決まった。第3回となる今回は77人から293点の作品が寄せられた。5年前の前回より作品数は若干減ったが、精選した作品を送って下さる方が増えたためか応募人数は増えている。
 8月28日付でお伝えした通り、最優秀賞は大川光さん(日高川町)の「おいやんら畦で一服青田波」。優秀賞は田中よしみさん(御坊市)の「あかんつや泣いた校舎のさるすべり」と東和子さん(御坊市出身、高石市在住)の「枝のせみ鳴かんといてよ孫ひるね」。「おいやん」「あかんつ」「鳴かんといて」と体温の感じられるような身近な御坊弁が、五・七・五の俳句のリズムの中で生きる。
 受賞者の皆さんを取材して、家族とのつながりなど、十七文字の中にそれぞれ物語が込められていることに感じ入った。大川さんは実家の父や兄が田んぼで働いていた思い出、田中さんはがき大将だった幼い頃の弟、東さんは遊び疲れて夏の午後に昼寝する孫への愛情を詠んでいる。東さんの句に詠まれた「せみ」が鳴いている場所は、堺市と高石市にまたがる浜寺公園。百人一首に詠まれた浜のある所だという。そうきくとまた違ったイメージが湧く。
 俳句はわずか17音から成る、世界最短の定型詩。「行間の意を汲む」のが得意な日本人にはふさわしい詩形かもしれない。ふるさとの言葉ならではの温かさがそこに深い味わいを加える。受賞句以外の多くの作にもそれぞれ違った味わいがあり、目を通させていただくのは大変楽しい作業だった。293点すべての隠された物語をお聞きしたいが、できないのが残念だ。多くのご応募に感謝申し上げたい。   (里)