日高川町寒川の山里の農村景観にマッチしている寒川家の住宅。かやぶき屋根のたたずまいとその景観を見ていると古い時代にタイムスリップしたかのようで、何とも言えない美しさを感じる。その姿に魅了され、カメラマンらにも大人気。写真に収めるカメラマンも多く、筆者も近隣の寒川神社の秋祭りなどで目にしたときはうっとりと見入ってしまう。かねがね、家の中を見てみたいと思っていた。
 そんな寒川家住宅の母屋など7棟を、国の登録有形文化財にするよう国の文化審議会が19日、下村博文文部科学大臣に答申した。江戸時代末に建てられたそのままのたたずまいを残す母屋をはじめ、屋敷構えは再現が困難で歴史的価値が高く、農村景観にマッチしている点などが評価された。
 この記事の取材で寒川家を訪れ、念願がかなった。住宅の中で、住人の寒川歳子さんが母屋の間取りなど説明してくれ、そのあと答申対象の風格ある表門、落ち着いたたたずまいの離れ、白い壁の美しい土蔵など各棟も案内。石垣には家紋の梅をかたどった部分があることや土蔵はかつてシイタケの保存場所として利用していたことなど事細かに教えてくれた。答申に際し、「とてもうれしくありがたく思います。ただの住まいで冬は寒いですが、この季節はとても涼しい住居。今回の登録であらためて大事にしていきたいという思いです」というコメントをもらったが、本当に涼しい。驚きのあまり、「こんなに風通しがよく、この暑い季節にこんなに快適に過ごせる家があるのですね」と思わず、歳子さんに言ってしまった。とても貴重な日高地方の文化財。いつまでも昔ながらのこのままの姿で、存続していってほしいとあらためて思う。 (昌)