南部高校龍神分校が全国高校野球選手権記念和歌山大会で1、2回戦を突破して3回戦へ駒を進めた。地元の田辺市龍神村でも高校野球の話題で持ち切りで、住民らは「テレビで観戦するのが楽しみ」「次はどこと対戦するのか」「地元の高校が勝っているのでとてもうれしい」などと表情は明るい。分校の高校球児の活躍ぶりが住民に笑顔を届けている。
 同校に硬式野球部ができたのは、ちょうど10年前の平成15年。軟式野球部から硬式野球部に変わり、当初は部員5人で発足した。公式戦に初出場したのは翌年の春期近畿地区大会県1次予選。夏の大会では、17年に貴志川に8―7で競り勝って初勝利を収め、19年には大成に6―0で勝って2勝目を挙げた。しかしその後は勝ち星から遠ざかり、今大会の初戦で桐蔭に2―0で完封勝ちしたのは、6年ぶりの勝利となった。2回戦では貴志川を11―4のコールドで鮮やかに下した。
 それはもちろん選手や監督らの努力の賜物。しかし、忘れてはいけないのが地元の支援。同部には地域住民で結成する後援会組織もあり、村内の龍神ドームで試合がある時は大勢の住民が駆けつけて声援を送っている。6月には住民からバッティングマシンの寄贈もあった。地元住民が野球部の活動を温かく見守り、支えてきたことが大会での勝利につながったといえる。
 次は3回戦で日高と対戦する。地元同士の戦いで複雑な心境だが、支えてくれている大勢の人たちの思いをプレーで表し、暑さにも負けない好ゲームを期待したい。それが龍神分校野球部の伊藤嘉彦部長が常々言われている「地域への恩返し」になるだろう。   (雄)