国立病院機構和歌山病院(楠山良雄院長)が御坊市民文化会館で市民公開講座を開き、「肺炎」をテーマに約80人が呼吸器内科医の駿田直俊副院長らの話を聞いた。肺炎は2年前の統計で脳卒中を抜き、日本人の死因の第3位にランクされるポピュラーな病気。駿田副院長は肺炎の症状、原因などを解説し、「バランスのとれた食事で免疫力を高め、口の中を清潔にしておくことが予防につながる」などと話した。
 肺炎は、一般的には酸素を取り入れる肺胞(はいほう)が炎症を起こして水浸しのような状態となり、正常な呼吸ができなくなる病気。悪化すれば菌が入り込んで全身に回り、敗血症や臓器の機能障害を起こすなどし、とくに高齢者は肺炎がきっかけで寝たきりになってしまうことも多い。和歌山病院には昨年1年間で、約150人が肺炎と診断を受けて入院。6人に1人の25人が亡くなったという。
 肺炎のり患場所による分類は、普通の生活の中で発症する「市中肺炎」、病院などで治療中の患者や他の病気のある患者に発症する「院内肺炎」のほか、近年は老人ホームなどの介護施設で発症する「医療ケア関連肺炎」という分類も加わり、大きく3つに分かれる。それぞれ原因となる病原菌に多少の違いがあり、治療法などのガイドラインが定められている。
 代表的な原因菌としては、肺炎球菌とインフルエンザ菌(冬に流行するインフルエンザウイルスとは違う)の2つがあり、この2つで市中肺炎の半分を占めるといわれている。健康な人の鼻やのどにも常在するが、若く免疫力がある場合は発症しない。比較的若い人に多いマイコプラズマ菌は感染力が強く発症しやすく、家族や学校、職場などで集団発生することがある。このほか、高齢者の発症が多いものでは、肺炎クラミジア菌があり、温泉などで感染するレジオネラ菌もまれにみられる。
 肺炎の主な症状は、せき、たん、発熱、胸が痛いときに息苦しいなど。たんが増えたり、症状がなかなか治まらず、胸の奥が息苦しいという場合は通常の風邪ではなく、肺炎を疑う必要がある。高齢者はせきやたんがなくても、「食事がおいしくない」「だるい」「なんとなく元気がない」という状態で、調べてみれば肺炎だったというケースも少なくなく、家族らの注意が必要になる。また、肺炎で亡くなる人の90%以上は高齢者で、その肺炎のほとんどは誤嚥性肺炎。眠っている間に唾液が少しずつ気管から肺に入り込んでしまう。
 駿田副院長は「肺炎は健康で若い人でも、マイコプラズマ菌のように体内に入ってきた菌が強い場合は発症し、逆に、菌の力が弱くても、持病があったり免疫力が落ちているときには発症します」とし、▽バランスのとれた食事と運動で免疫力を維持する▽食事中の誤嚥に注意する▽口の中を常に清潔に保つ――などが予防になり、禁煙も肺炎リスクの低下につながることを強調した。