田舎で生まれ育つと、海や野山の美しい風景など見慣れていて当たり前に思うが、都会の人から見れば自然そのものが大きな財産であろう。豊かな自然は観光面でも一つの武器であり、ゴールデンウイークまっただ中、白浜や世界遺産の熊野目当てに多くの行楽客が和歌山に訪れている。高速道路が対面通行で時間帯によっては15㌔以上の大渋滞が毎回起こっても、人は癒やしを求めて集まってくる。アクセスも大事だが、そこに目的があれば人は寄ってくるということだ。集客アップのヒントはここにあるように思う。
 富士山のように世界遺産とまではいかないが、全国有数のウミガメの産卵地であるみなべ町の千里ヶ浜を含む紀伊半島南部の県立公園を国立公園に格上げする話が持ち上がっている。環境省の調査では、「世界に誇れる美しい景観」と高い評価を受けた。県も知名度アップとネームバリューによる観光客増に期待を寄せている。実際、全国に30カ所ある国立公園のうち多いところでは年間数千万人以上が訪れている。和歌山と奈良、三重の3県にまたがる吉野熊野国立公園も年間800万人前後の集客力があり、和歌山の観光を支えている。
 熊野参詣道の世界遺産登録も手伝って、日高地方にも古道ウオーキングを中心に観光客は根強く、国立公園とコラボした集客アップへの仕掛けは十分できそうだ。例えば国立公園でウミガメの産卵を間近で見るツアー、みなべ町沖でのサンゴ礁ダイビング、熊野古道と梅林ウオーキング。身近な自然を生かしたアイデアはまだたくさんあるだろう。国立公園化によって、見慣れていた自然の魅力を見直すきっかけになればと願っている。(片)