毎年、この時季には高齢の母を連れて車窓から花見をするが、 ことしは母の風邪がひどく、 各地の桜の写真を撮ってくることになった◆印南町の新大峠トンネルを抜けたところにある桜並木が気に入っていたのだが、 行ってみるともうほとんど花がなかった。近隣の稲原中周辺のソメイヨシノも見てみたが、 先月本紙でも紹介された通り、 渡り鳥の 「ウソ」 に食べられたためか花が 「スカスカ」。 舞う雪がストップモーションになったようで風情がないこともないが、 やはり淋しい感じがする◆ネットで調べると、 「ソメイヨシノのつぼみがウソに食べられた」 との報告が各地で何件もみられた。 ソメイヨシノに限るようで、 確かに周辺を見て回ったところ、すぐ近くでも他の桜は満開だった。他の種類とどう違うのかと興味が湧き、性質や歴史を調べてみた◆現代の日本で桜といえば大体これを指すが、歴史は案外新しく、江戸後期。 種子では増えず、 現在ある木はすべて人の手で接ぎ木されたもの。 元をたどればどれも限られた原木につながる。 何かサラブレッドを思わせる。 ヤマザクラと違い、 高齢の木は少ない。 環境の変化や病気に弱く、 木の周辺にゴミを捨てられたり枝を折られるとたちまちダメージを受ける。 マナーの悪い花見客はソメイヨシノの天敵といえる。 なぜ野鳥に特に好まれるかは分からなかった。 性質の強い野生種と違い、 ソフトで食べやすいのだろうか◆山野でなく身近な場所で春を楽しませてくれるソメイヨシノ。 そのデリケートな性質を知ってみると、この花は変化に敏感に反応することで、 周囲の環境を守るよう無言で訴えているとも思える。野鳥の仕業では如何ともし難いが。 (里)