渡り鳥の 「ウソ」 が例年に比べ全国的に多く飛来している影響で、 みなべ町では梅の雌しべやつぼみが食べられる被害が相次いでいる。 高城や清川の山間部で被害が目立ち、 園地によっては南高梅の交配のために植えている木が枯れ木のような状態になったケースもあり、収量の減少が懸念されている。町では有害鳥獣申請を認定し駆除を許可したが、有効な防除策はなく、関係者は頭をかかえている。  ウソはスズメより一回り大きい渡り鳥で、 一般的に4月から6月にかけて中国大陸で繁殖。 冬になると比較的暖かい中国大陸南部や日本などに飛来して越冬する。 日本でも毎年この時期に見られるが、 ことしは例年にないほど異常に多く、 みなべ町の山間地である高城や清川地区では 「例年は数羽見かけるぐらいだが、 ことしは20~30羽の群れで梅畑にやってきて、 つぼみなどを食い荒らしている」 との声が2月ごろから増えている。 特に被害が大きい高城地区では、 町に対して有害駆除を申請。 町職員が調査し、 被害が広がっていることから許可を出した。 ウソの有害駆除申請が出たのは初めてだという。
 ウソ被害を独自に調べ、 町議会定例会の一般質問で取り上げた高城地区の下村勤議員によると、 園地によっては花が満開のはずの時期に、 雌しべやつぼみがつつかれて丸裸状態になっている木が何本もあったという。 特に交配樹の被害が目立っている。 交配樹の花びらが落ちてしまうと、 南高梅が受粉できなくなり、 収量が減少する可能性がある。
 有害駆除が認められ、 地元の猟友会の協力を得たが、 数が多い上に人が近づくと逃げるウソを駆除するのは困難。 大きな音などで追い払うぐらいしか方法がないのが現状で、 梅農家らの頭痛の種となっている。 下村議員は 「こんなにたくさんウソが飛んでくるのは初めて。 少し食べられるくらいなら問題ないが、 ここまで被害があると笑っていられない。 猟友会と連携して、 被害が少なくなるよういい方法を考えていきたい。 このまま居つかなければいいのだが」 と心配そうに話していた。
 日本野鳥の会幹事でわんぱく公園 (海南市) の有本智園長によると、 ウソはことし全国的に例年にないほど大量に飛来している。 詳しい原因は分からないが、 「昨年の繁殖時期に大きな気候変動等がなく、 たくさんのヒナが生まれて個体数が多いことや、 ことしはモンゴル周辺が寒波に見舞われているという情報があるので、 例年中国大陸で越冬していた個体も日本に南下してきているのが影響しているのかもしれない」 と分析。 一過性の問題との見解で、 「繁殖時期の4~5月ごろにはいなくなるだろう」 と話している。