日高川町寒川神社で3日、寒川祭が行われ、日高地方の秋祭りのラストを飾った。
 ことしの秋祭りは、プライベートでは美浜町御﨑神社の和田祭に参加。悪天候で四十数年ぶりに本祭りが中止となり、神事と社務所内での舞獅子だけとなった。天候が回復した午後からは組で四ツ太鼓と屋台で区内を練り歩き、時間に追われることなくのどかなひととき。珍しい社務所での獅子舞も見ることができ、中止は残念だったが、こんな祭りもいいものだと感じた。
 仕事では寒川を含め、日高川町内6神社で取材。寒川祭は、4人立ちの獅子舞が見どころ。王仁(おに)、和仁(わに)らとともに剣の舞、鈴神楽、道中神楽、長老の舞、長刀の舞など披露した。道中神楽は機嫌を損ねて歩くのを嫌がる獅子を王仁、和仁が、さまざまな演技で誘導。長老の舞では王仁、和仁が鉾を十文字に組んで伏した獅子を起こし、長刀の舞では児童が長刀を振ると獅子はびっくりして飛び起きた。剣の舞は魔払い、鈴神楽は神慮を慰め和らげ奉る意がある。お戻り後にはお多福が登場し、滑稽でセクシーな姿で獅子に隠れたり現れたり。ことしは神社始まって以来、女性が大太鼓を務めたほか、お多福が獅子頭をつかむというサプライズもあり、多くの見物人を魅了した。
 祭りは、江戸時代に関東の浪人医師、岡本橋順が伝えたとされ、神楽の諸演技と曲は壮重典雅。規律も厳しく、酒気を帯びない祭りとして知られる。四ツ太鼓や屋台が勇ましく練ったり、若衆が力強いパフォーマンスを見せるわけでもない。禁酒が物語るように厳正で、とても風流。のどかな山里の何とも言えない祭り。見たことのない人は、一度ご覧いただきたい。     (昌)