和歌山市の県立医科大は先進的がん診療と地域医療の充実などを目指し、 新たに地域医療支援総合センター (仮称) を建設する。 場所は付属病院棟東側ロータリーの南で、 既設病院棟と連絡する形で鉄筋コンクリート5階建てを新設。 手術室の7室増設で多くの手術待ち患者を減らすことができるほか、 地域医療支援の分野では他の病院の外来患者や救急患者の遠隔診療も行えるようになる。
 同大学の板倉徹理事長が15日の記者会見で発表。現在、付属病院には手術室が12室あるが、年間の手術件数は7800件(平成23年)で、平成10年の移転当時の想定を大きく上回り、手術待ちの患者が増加している。新たに設置する地域医療支援総合センターはがん診療を中心とした診療設備として、4階の中央手術部に7室の手術室を設け、現在の12室から19室に増設。これにより、年間最大1万1760件の手術が可能になり、板倉理事長は「がん患者の場合は手術を先送りできない。新棟が完成すれば現状の飽和状態を大きく緩和することができるだろう」と話す。
 県内の他の病院の診療支援や若手医師の教育・育成では、3階に地域医療支援センターを設置し、大学の県民医療枠、地域医療枠の学生(現在5年生)の卒後9年間の研修をサポート。専門医や学位を取得できる研修プログラムを作成したり、各種セミナーや病院研修の実施するほか、他の病院の医師不足の現状把握と分析を行い、緊急避難的に医師を派遣したりする。
 地域医療センターではこのほか、ITネットワークによる他の病院の患者の遠隔診断や遠隔医療も実施。専門医のいない病院の患者がわざわざ医大まで来る必要がなく、医大の専門医がテレビ電話形式で必要に応じて患者と会話をしながら、他病院の医師の診察をサポートする。また、遠隔地の救急患者についても、医大の救急外来の医師がこのシステムで診断や処置を支援。リアルタイムで患者の様子を確認し、現場の医師と無線のヘッドセットでやりとり(患者には聞こえない)しながら画像診断、転院指示など、専門的治療の必要性を助言できるという。
 新棟の建設工事は11月中旬から始まり、工期は平成26年3月中旬まで。工事期間中は現在の平面駐車場がすべて使用できなくなるため、病院とJR紀三井寺駅間の無料シャトルバス(平日のみ)を運行する。