ある男性の高校時代の同級生に、東大に現役合格、卒業後も難なく司法試験を突破したという秀才がいる。大学を卒業して20年がたったいま、その秀才君は法曹界でもキレ者として活躍していると思いきや、風の便りではどうもうだつが上がらないという話。温厚でのんびりした性格が司法の現場には合わないようで、社会に出てからはみんなの予想を裏切る結果になっているという。
 世の中、どんな職種、業種であっても、一般的に求められるのはまずスピード。いくらていねいでも、どれほどセンスがよくても、仕事が遅いというのは相手にも仲間にも大きなストレスで、「どんくさい」と書かれた下の方の引き出しに入れられてしまう。
 日本維新の会の代表を務める橋下徹大阪市長。北野高校時代の学業成績はいまひとつ、1年浪人して早大政経学部に入学した。司法修習生から弁護士になってからも、「仕事をコツコツとするタイプではなかった」というのが上司や仲間の一致した見方。いわゆるエリートからは外れた位置にいた。
 そんな橋下市長は国政の風雲児、最も熱く、人気のある政治家となった。ここにきて、その人気を「ポピュリズム」として眉をひそめる評論家も多いが、行財政革ではまずおのれが血を流し、市長と職員組合の互助会的なもたれ合いにメスを入れた。この決断と実行力が支持を集め、何よりも負けん気と改革の早さがリーダーとしての自分を支えているのだろう。
 ただ、大阪都や道州制を実現する前に国政に打って出たのは、スピードがあまりに速すぎる感も。振り返れば、有権者ははるか後ろ、見えなくなってはいないか。 (静)