県立医科大学(板倉徹学長)は14日、泌尿器や消化器系のがん治療の水準向上へ、最新のロボット支援手術「ダヴィンチ」を導入すると発表した。従来の開腹せずに内視鏡等を挿入して行う腹腔鏡手術が進化した術式で、執刀医はモニターを見ながら指先に装着するコントローラーを動かし、患者の体内に挿入する自由度が高い鉗子(かんし)を遠隔操作。すでに海外では標準的な術式として確立、国内でも前立腺全摘手術が保険適用され、同大付属病院では早ければ年内にも運用がスタートする。
 ロボット手術は軍事医療の分野からアメリカで研究・開発が進み、現在、世界的に導入が進んでいるロボット支援手術の中で「ダヴィンチ」は代表格。アメリカのインテューティブサージカル社が開発した。県立医科大泌尿器科の原勲教授によると、泌尿器や消化器、婦人科系のがん摘出手術は現在、開腹せずに炭酸ガスで膨らませた腹腔内に内視鏡や電気メスを挿入して行う腹腔鏡手術が主流となっているが、ダヴィンチはこれに代わるさらに進化した術式として海外では急速に普及しつつある。国内はことし4月に前立腺の全摘手術が保険適用となり、現在までに全国で約40台が稼働。近畿では京都大、神戸大など3つの医療機関に導入されており、和歌山県立医大は近畿で4番目となる。
 ダヴィンチの手術は、執刀医が患者から離れた場所で、専用の3次元画像モニターを見ながらいすに座ってロボットを操作。医師の指先の動きがケーブルを通じて、患者の体内に入るロボットアーム先端の鉗子に伝わり、人の手首以上に自由度が高い動きで腫瘍の切除、縫合などを行う。まるで患者の体内に入ったかのような感覚で、直感的な動きで繊細、正確な手術ができるという。
 システムの費用はざっと3億1000万円。県立医大付属病院では現在、年間約70件程度の前立腺がん全摘手術を開腹・腹腔鏡で行っており、ダヴィンチ導入後は約90件程度になると予測。原教授は「高度先進医療の象徴でもあるダヴィンチを、南近畿で初めて導入できることは、県民にとって大きな福音となることは間違いない。今後、動物を使ったトレーニングや実際の症例を想定したシミュレーションを重ね、早ければ年内、遅くとも来年3月までには稼働させたい」と話している。