先日、野田佳彦首相が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の交渉に参加することを表明した。加盟国内の貿易では国内産業保護を目的とする関税がなくなり、自由貿易化が図られるという制度。自動車や電機製品などを輸出している企業にとっては歓迎だが、農業や漁業の従事者らにとっては外国から安い商品が輸入されることになり、大きな打撃を受けるとみられている。ただでさえ中国産の野菜など安い農産物などが海外から輸入されている現状だが、さらに農業経営が逼迫すると考えられる。言ってみれば、これまでは外国と試合する場合、日本がホームゲームだとハンディをもらっているようなものだったが、今後はそのハンディがなくなる可能性がある。
 しかし、一部の農家は日本がTPPに参加することをチャンスと捉えている。品質の高い日本の農作物が海外の富裕層に消費してもらいやすくなるという考え方もあるからだ。日高地方の農業に目を向けても、特産の梅などについてはTPPを機会に海外に輸出するチャンスでもあるのではないだろうか。海外でも健康食としての日本食が見直されており、梅酒などは外国でも十分に売り出すことが可能だと思うのだが。
 いま、国論を二分しているTPP。日本の産業を変える分岐点になるかもしれないほど重要な問題。筆者は決してTPP賛成という立場ではないが、産地としてのブランド力や安全安心を高め、外国勢に対抗することが重要だとは思う。近年は経済のグローバル化が進んでいる。地域農業も例外ではなく、世界でどう戦うかという時代に入っている。  (雄)