12年前、子どもたちが1字ずつリレーしながら仕上げた書「雨ニモマケズ」

 12年前、日高川町の書道教室大前書院(大前彩雨代表)に通っていた教室生たちが1字ずつリレーしながら書き上げた宮沢賢治の詩「雨ニモマケズ」の書が今月末まで、日高川交流センターで展示されている。能登半島地震や戦争など暗いニュースが多い中、当時の子どもたちの書に込めた思いが見る人の胸に響く。

 同町は2011年の紀伊半島水害で甚大な被害を受け、翌12年夏、当時の小学6年生から「『雨ニモマケズ』を教室のみんなで書きたい」という声が上がり、1年生から6年生まで18人が町の復興を願い、1字ずつ全文を筆でリレーして仕上げた。

 作品の大きさは横約4㍍、縦約1㍍で、同年に日高川交流センターに展示され、その後は大前さんが自宅で大切に保管していた。今月4日に日高川交流センターで開かれた御坊ライオンズクラブの暗唱大会で中津小学校児童が「宮沢賢治の世界」を群読したことがきっかけで、「石川県では能登半島地震が発生し、世界的にみれば戦争も起こっています。被災した地の一日も早い復興を祈りたい」と、「雨ニモマケズ」の書が再び展示された。

 大前さんは「紀伊半島水害から12年が経ち、ふるさとは復興し、当時の6年生は自分の道に進み、1年生は今年の春に自分の夢に向かって高校を卒業します。災害や戦争で被災した地は大変な状態だと思いますが、未来はあります。書を通じて応援したい」と話している。