第11回日高地方子ども暗唱大会(御坊ライオンズクラブ主催)を取材し、詩人谷川俊太郎の代表作の一つとされる「生きる」を小学生による群読で聴いた。「生きているということ/いま生きているということ」というフレーズから、生きていればこそできるさまざまなことが続く。「のどがかわくということ」「ふっと或るメロディを思い出すということ」「あなたと手をつなぐということ」…「泣けるということ」「笑えるということ」「自由ということ」。「自由」と、子どもたちは力を込めて繰り返した◆発表を聴いて思い出した同じ作者の詩がある。9年前、2015年2月の第4回大会で暗唱された「くり返す」。「人の命は大事だとくり返さなければならない/命はくり返せないとくり返さねばならない」。その日の朝報道された、「イスラム国」によるジャーナリスト後藤健二さんの犠牲がずっと頭にあったことから、叫ぶようなこの詩の発表が強く印象に残った◆個人の部優秀賞は田島征三の絵本「ぼくのこえがきこえますか」。これも、以前の大会で聴いたおかげで知っていた。受賞児童の姉が数年前に暗唱した作品で、戦死した兵士の魂の叫びである◆世界の状況は、9年前と比してどうなのか、簡単には言えないが、内戦ではなく国家間の武力抗争が毎日のように報道されるという点で、悪くなっているように思える。子どもたちのまっすぐな声、そこに乗せられる言葉が、世界に挑みかかるようだ◆大会テーマは「美しい日本語の再発見」。美しい言葉とは、語る人の真の思いが聴く人の心にまっすぐ届く、そんな力を持った言葉なのだと思った。言葉に思いが込められていればこそ、その真情が心のうちに響く、その響きを人は「美しい」と感じるのだろう。(里)