任期満了に伴う印南町長選が6日告示され、4選を目指す現職の日裏勝己氏(73)=皆瀬川=と、元兵庫県議の小西彦治氏(52)=兵庫県伊丹市=がともに無所属で立候補した。昨年9月の日裏氏の出馬表明以降、ほかに表立った動きがないまま年が明け、一時、立候補を検討していた小西氏も不出馬の意向を示し、告示直前まで無投票ムードが続いていたが、5日になって小西氏が無投票阻止を理由に出馬を決断。急転直下の選挙戦突入となった。(記事は届け出順)

 今回の選挙に向けては、日裏候補が昨年9月の議会一般質問で意向を問われ、4選を目指して出馬する意思を表明した。その後、表立った立候補の動きはないまま、日増しに無投票ムードが色濃くなっていったが、年が明けたころから、無投票阻止を掲げて全国各地の首長選に立候補している小西候補のうわさが広がった。

 小西候補は本紙の取材に対して先月25日、「出馬を考えている岐阜県本巣市長選の告示日と印南の投開票日が重なるため、両方ともの出馬がかなわない。そのため、現在は本巣市長選に立候補する方向で進めている」などと印南町長選は不出馬の考えを示したが、告示前日の5日夕方になって一転。「急きょ、印南町長選に出馬することになった」と連絡があった。

 印南のまちに何のゆかりもない新人出馬でまさかの選挙戦突入となり、日高地方ではかつてない異例の事態に有権者からは戸惑いの声も聞かれるなか、11日の投開票まで5日間の短期決戦がスタートした。

 日裏陣営は印南駅前の選挙事務所で出陣式を行い、支持者ら約300人(主催者発表)が集まった。中村泰介後援会長はこれまでの日裏候補の実績を振り返り、「安心安全なまちづくりを3期12年にわたってやってこられた。3期目はコロナ対策で大変な中、自身が先頭に立ってワクチン接種会場の現場に必ず顔を出してくれていた。それが4期目への期待の表れとなり、皆さんが集まっていることと思います」と述べ、「これからの町の課題に向かい、希望あるまち印南へ先頭に立って走っていただける」と4選へのさらなる支持拡大を呼びかけた。

 応援には岸本周平知事や日高郡内をはじめ県内各市町の首長らも駆けつけ、岸本知事は「日裏さんは温厚な人柄でいつも助けてもらっている。地震・津波対策など、県政とともに安心安全のまちづくりに取り組みたい」とあいさつした。

 マイクを握った日裏候補は「人口減少が進む中、若い人が住んでよかった、住みたいと思ってもらう町にしなければならない。いま進んでいる中学統合も、次の任期満了まで精いっぱい取り組みます」とし、「防災対策では一人の犠牲者も出さないことを最大の仕事としていきたい」と力強く訴えた。最後はガンバローコールで気勢を上げた。

 小西候補は兵庫県伊丹市出身。兵庫県議を1期4年、伊丹市議を通算2期8年務めたあと、現職の多選や無投票阻止を理由にこれまで全国10カ所の首長選挙に出馬してきた。

 当初は岐阜県の市長選に出馬予定だったが、勝つ可能性が少しでも高い方と判断し、前日に急きょ、印南町長選へ出馬を決意。告示日当日、自家用車で印南町入りした。届け出後、取材に応じ、出馬について「(野党から候補者が出ない)オール与党の行政が本当に町民のための行政といえるのか」と無投票阻止を最大の理由に挙げ、「縁もゆかりもないが、そういうところでも小西が訴えていたことのいくらかはいい話だった、次の政策に挙げてもいいんじゃないかと(住民に)思ってもらえると、出た意味があると思っている」と強調。5日間の選挙戦は毎日、伊丹の自宅から通うとし、「交通アクセスがよく、印南町は都会のベッドタウンとしての魅力もある。子育てしやすい環境で移住も期待できる。そんな魅力を発信したい」。印南町でのまちづくりでは「南海トラフ地震の防災対策は不十分で、避難場所が分かる路面マップなどに取り組む」と政策を掲げ、「町長の退職金をこの町のためになる事業を行う町民に還元することなど、夢のある政策を実行したい」と話した。