コロナで延期となっていた市民教養講座が再開。俳優で気象予報士の石原良純さんの講演を取材させていただいた。濃い内容で多岐にわたったが、大きく分けると家族、俳優人生、空の話。それぞれ印象に残った言葉を紹介したい◆2月に他界された父君、作家で政治家だった慎太郎氏は余命の宣告を受けてからも精力的に執筆を続け、街を闊歩し、良純さんを叱り飛ばした。その叱り方が「小気味よくて、うれしくなっちゃって」。遺骨を預かり、良純さんの奥さんが「きょうはお父さん静かね」といった夜、雷鳴がとどろき落雷する夢を見ては飛び起きた。「親父の変なエネルギーが残ってた」。アウトプットのためのインプット、読書や人間観察を続け、常人にはできないほどの「エネルギーを出し続けた人」。「人間は感性で生きるものだ」が口癖だったという◆俳優人生の話で印象に残ったのはつかこうへいさんの舞台で主演した時、つかさんに言われた言葉「(主役は)絶対に揺れるなよ」。人間は迷う時、体も揺れる。揺れないためにはエネルギーがいる。周りに負けないエネルギーを出していれば、自分は静止していられる。「揺れるな」は芝居だけの言葉ではないと感じたという◆気象予報士になったのは「子どもの頃からの謎を解き明かせると思ったから」。教科書の第1章は「太陽系にある地球」から始まる。「神の目を持つ学問だと感動した」。上空100㌔から先が宇宙、空を見上げるだけで100㌔先を見ることになる。その一方、筆者は宇宙が意外に近いと感じた。戦火の続くウクライナは8000㌔以上の彼方なのに◆「いろんなことに興味がある」と言われながらも、一本筋の通った視点からの話であった。海上でなされる定点観測のように。(里)