写真=パソコンで漫画を修正するさいわいさん

 4コマ漫画「ぼくはコースケくん」などで知られる印南町美里、漫画家さいわい徹さん(71)=本名・幸徹=が昨年4月から、岡山県備前市の依頼を受けて、伝記漫画の制作に取り組んでいる。同市で活躍した江戸時代の陽明学者熊沢蕃山(くまざわ・ばんざん、1619~91年)の功績や遺徳を紹介する内容で、さいわいさんは「自然災害対策の礎を築いた日本が誇る偉人。漫画が完成すれば多くの子どもたちに読んでもらいたい」と話している。

 さいわいさんは大阪市阿倍野区出身で、阪南市で生活したあと、静かな生活環境で仕事ができるようにと、印南町美里に移住し、今年で21年目。漫画家には20代後半のとき、雑誌「まんがタイム」に「ぼくはコースケくん」の連載でデビュー。「カムイ外伝」の影響を受けたという独特のタッチの作風が人気となり、連載は15年間続いた。1983年、コロコロコミックに掲載された「宇宙人ピー」では藤子不二雄賞も受賞している。

 伝記漫画では30年前、滋賀県の旧安曇川町(現高島市)の依頼を受けて、同町で昔、陽明学を学んだ熊沢蕃山や同じく陽明学者の中江藤樹、僧侶の青木文教を描いたことがあった。今回、その熊沢蕃山の伝記漫画を知った備前市教育委員会が、同市でもかつて多大な功績を残した熊沢蕃山の伝記を漫画で分かりやすく描いてもらおうと依頼。さいわいさんは快諾するとともに、同市の特別観光大使も引き受けることになった。

 漫画の制作は以前描いた熊沢蕃山のストーリーをベースに、備前市と関わりのあった部分を書き下ろしている。熊沢蕃山は江戸時代の岡山藩で「自然破壊をすれば自然災害が起こって大変なことになる。山に豊かな草木がなければ洪水が起きる」という学問を広め、災害対策の土木工事も実践して自然災害対策に尽力。伝記漫画は早ければ年内にも出版される予定で、さいわいさんは「350年も昔に自然災害のことを理解し、品格を持って対峙していた人がいたのはすごいこと。現在、コロナや豪雨災害が発生しているが、いまの政治も見習ってもらいたいですね」と話す。

 さいわいさんはブログも開設しており、過去の作品が無料で読める。