今月9日、和歌山市の集合住宅で16歳の少女が心肺停止状態で発見され、病院に運ばれたが死亡した。全身にあざがあり、死因は全身打撲による外傷性ショックと判明。警察が虐待の疑いがあるとみて捜査している。

 子どもが家族から虐待を受け、死亡する痛ましい事件があとを絶たない。全国的には年間50人ほどが亡くなっており、和歌山市で今回のような強烈なケースがちょこちょこあるせいか、和歌山県は多いように感じる。

 県が発表した2020年度の児童虐待相談の状況をみると、和歌山市と田辺市の県内2カ所の児童相談所に寄せられた相談は合計1726件に上り、前年度より35件増加。5年連続で過去最多を更新した。

 身体的、性的、心理的、ネグレクト(育児放棄)の4つに大別される虐待種別では、言葉による脅しなどの心理的虐待が最も多く、相談全体のうち814件で5割近くを占め、前年度より33件増加している。

 心理的虐待には子どもが親から直接受けるケースのほか、父親が子どもの目の前で母親を殴るなど、直接の暴力ではない「面前DV」が含まれる。これはコロナ禍に急増しており、日高地方のある自治体職員も増加を実感しているという。

 子どもが死亡する最悪の事態に至らぬよう、求められるのは自治体、学校、警察、児童相談所などの連携(情報共有)強化。子どもへの心理的虐待にあたる面前DVも、警察から児相への通告が徹底されつつあると聞く。

 住民としては、隣の家から頻繁に怒鳴り声や子どもの泣き叫ぶ声が聞こえるなど、虐待を疑うような異変に気づいたら、迷わず局番なしの「189」へ電話を。児童相談所につながる。匿名でもよい。体罰はしつけではない。(静)