花を見ると癒やされる、多くの人がそうだろう。なぜだろうかと調べてみると、千葉大学のバラを使った研究結果が公表されていた。視覚刺激による生理的リラックス効果を科学的に検証したデータによると、リラックス時に高まる副交感神経活動が29%高まり、ストレス時に高まる交感神経活動は25%抑制された。これにより、生花によるリラックス効果が証明されたという。花を見ているとリラックスしているときほど出るα波という脳波が多く出ているともいわれる。美しさはもちろんだが、すぐに枯れてしまうはかなさ、一瞬のきらめきに心を揺さぶられるのかもしれない。

 みなべ町東吉田にある鎌田池公園では今、バラが見ごろだ。13年ほど前、農業用ため池だった場所を高速道路の残土を活用して埋め立てたあと、地域住民が造成した珍しい手作りの公園だ。そこにさまざまな種類の花が植えられている。サクラ、ツバキ、ハスなど、ほとんど一年中何かしらの花が楽しめる。まさに住民の憩いの場となっているだけでなく、町外からも花を目当てに訪れるほど。その花を、公園をほぼ毎日世話している人がいる。地元の松本佳示さんだ。

 提供してもらった苗を植えたり、育った花を差し木して増やしたり、除草や水やりなど管理全般をこなしている。82歳には見えない軽快さで、何よりみんなに喜んでもらいたいという思いがあふれ出ているところに人として惹かれる、そんな住民も多いのではないだろうか。きれいに咲く花には、見えないところで力を注いでいる人がいる。コロナ禍で世の中の雰囲気はよくないが、今自分が生活しているのも、陰で多くの人に支えられている、あらためて感じさせてもらった。(片)