第60作に当たるNHK大河ドラマ、「青天を衝け」がスタートした。前作「麒麟がくる」の戦国時代から今度は動乱の幕末~明治期に移り、主人公は近代日本資本主義の父・渋沢栄一。2024年度から福沢諭吉に替わって新1万円札の顔になる人物だ◆それにしても前作といい、今回といい、「独眼竜政宗」「武田信玄」などのように主人公の名前の入らない、内容を象徴的にワンフレーズで表現するという凝ったタイトルが続いている。「青天を衝け」とは、渋沢栄一が詠んだ「青空をつきさす勢いで肘をまくって登り、白雲をつきぬける気力で手に唾して進む」という意味の漢詩からとられたそうだ。「衝く」は「突く」と違い、「不意を衝く」「核心を衝く」など、形のないものを対象とする。「意気、天を衝く」という言葉があるように、鋭く勢いを感じさせる言葉である◆第1話の平均視聴率は20・0%。初回が20%の大台に乗るのは、2013年の「八重の桜」以来8年ぶりだという。まったく根拠はないが、タイトルの印象も人の心をひきつけたのではないかという気がする。筆者自身、タイトルが発表された時からその言葉に心ひかれていた。どこまでも青く高い空に向かって突き抜けるような、意気盛んな若者の志。1年以上に及ぶコロナウイルス禍の閉塞感を打ち破り、どこまでもぐんぐん突き進んでいきたいと願う人々の心をも代弁してくれているようだ◆渋沢栄一に関しては勉強不足であまり予備知識がないが、幕末から明治という価値観が180度ひっくりかえった特異な時代を駆け抜け、昭和初期まで生き抜いて大きな仕事を成し遂げた人物であることは間違いない。いまという困難な時代を生き抜く、活力をくれるドラマであればいいと思う。(里)