五輪組織委員会の森会長の発言が女性蔑視だ、オリンピック精神に反すると、連日、メディアは大騒ぎしている。コロナで開催が危ぶまれるなか、以前から問題発言連発の会長のまたかの失言、いつまでもかかずらわっていられない。

 菅首相の放送関連会社に勤める長男が総務省の幹部に対し、法への抵触が疑われる接待を重ねていたという話もあるが、40歳にもなる息子が何をしようと、違法性があれば息子が罰を受けるだけであり、国会で追及する話ではないだろう。

 ジャーナリズムの使命は「権力の監視」という話をよく見聞きする。もちろん、権力の暴走を許さないため、真実を追求するのはその通りなのだが、このところの日本のテレビ、新聞、週刊誌は…。

 本来、マスコミは相手が権力であろうがなかろうが、常にニュートラルなスタンスで取材し、思想・信条にとらわれることなく、事実を客観的に伝えることが最大の使命。公平無私のその結果がときに権力の監視となる。

 先日、亡くなった昭和史研究家の半藤一利氏は、かつて日本が無謀な対米戦争へ突き進んだとき、マスコミは軍部の圧力に屈したのではなく、部数拡大のために自ら戦争をあおり、その結果として国民全体がなだれを打って破局への道を選択したと指摘する。

 朝井まかての小説に、庭づくりが趣味の森鴎外がある日、なじみの種苗屋が儲けに走り、在来種と偽って外来種を売ろうとする浅ましさを見抜き、とかく流行に流され、付和雷同しがちな日本人の気質を憂う場面があるが、ここ数年の政権たたき一辺倒の報道が重なる。

 いま、国会が優先しなければならない議論は何か。マスコミは反権力ありきでなく、事実と是々非々の原点にかえらねば。(静)