公益社団法人日本獣医師会の第28回日本動物児童文学賞の受賞作品が決まり、大阪からの移住者で印南町美里の漫画家、さいわい徹さんの児童向け小説「霧の波」が最優秀の大賞に次ぐ優秀賞を受賞した。初めて手がけた文学作品で都会の少年が田舎を訪れ、サルやイヌと触れ合う物語。自身が受けたカルチャーショックを織り交ぜて書き上げ、「動物を思う気持ちの大切さが伝わる」と高評価を受けた。
日本動物児童文学賞は、次代を担う子どもたちに正しい動物福祉や愛護の考え方を身につけてもらおうと、動物に関する文学作品を広く募集。入賞作品を表彰、公表するとともに、特に優れた作品を普及させることで、子どもの健全な育成と豊かな人間性を養成することを目的に実施している。今回は全国から118作品の応募があり、日本児童文芸家協会会員の井上こみちさんが第1次審査を担当。第2次審査に進んだ15作品の中から大賞1点、優秀賞2点、奨励賞5点が選ばれた。
 さいわいさんの作品は東京に住む少年が父の実家がある田舎を訪れ、群れからはぐれたサルと出会ったり、隣の家に飼われているイヌとの交流を描いたストーリー。「動物との共生の難しさや動物を飼うことについて、男の子の田舎での体験を通して考えさせられ、生態系保全の大切さが理解できるとともに、動物との共生に答えがないこと、動物を思う気持ちが大切なことが伝わってくる」と高い評価を受けた。大賞と優秀賞の3作品は受賞作品集として製本。全国の小学校を中心に図書館や関係機関に配られる。
 さいわいさんは18年前にIターン。サルやイノシシが有害鳥獣として扱われている現実を初めて知り、農村社会での鳥獣害問題をメーンに取り上げた。印南での生活を通して実際に見たサルやイヌをヒントに執筆。受賞に「びっくりしました。うれしいです。これからの活動、仕事に生かして漫画や文章の世界で頑張りたい。これまでは獣害をテーマにした作品が中心でしたが、これをきっかけに新しい題材も見いだして描こうと思います」と笑顔を見せている。