日高町比井崎漁協の正組合員や日高ダイビングセンターでつくる日高ダイビング協会(宮本紀和会長)のクロアワビの稚貝手付け放流作戦が5日に方杭地内、町営温泉館前の磯で行われ、京阪神方面の一般ダイバー38人が参加した。水揚げ量が激減しているクロアワビの復活を目指して3年目の取り組み。ことしは湾内に岩場を造成して、食害や移動の状況などを確認するための定点観測をスタートさせた。
 クロアワビは高級食材として知られるが、町内沿岸の水揚げ量は、最盛期の10分の1以下に落ち込んでいる。これまでも漁師が稚貝を放流してきたが、天敵のマダコやヒトデなどの食害に遭ったり、エサとなるアラメやカジメなどが生えている岩盤の割れ目にうまく付着しなかったりして生存率が低く、減少に歯止めがかかっていなかった。そこで、一般のダイバーの協力を得て、天敵が避けられるような岩場の割れ目などに手付けで正確に稚貝を付着させて、個体数を増やそうと取り組んでいる。水揚げできるまでには、5、6年かかるという。
 ところが、放流する場所が湾の外で、毎年10月から翌3月上旬までは地元の刺し網漁が行われるため潜水禁止区域となる。このため、アワビが順調に育っているのかどうか、年中を通しての追跡調査が難しく、これまで放流したアワビがほとんど確認できない状況となっていた。今回、いつでも定期的に観測できるよう、潜水禁止とならない湾内に面積1平方㍍の範囲で岩場を造成。水深は3㍍程度で、試験的に100個(大きさ2~3㌢)の稚貝を放流。今後の食害の個数や移動の状況を調べて、稚貝の放流場所の選定や食害の対策に役立てていく。
 この日、ダイバーらは例年通り、湾の外にも約1900個の稚貝を放流。各グループに分かれて潜水し、水深6㍍の場所に手作業で付着させていった。大阪から来たという武田麻穂さん(23)のグループは「インターネットで放流のことを知り、参加しました。アワビが元気に育ってくれればいいですね。自分が放流したアワビを食べてみたいです」と笑顔をみせていた。