日高町語り部の会(杉村邦雄会長)が、原谷地内の熊野古道で進めているササユリの復活プロジェクトは、いまのところ「ワイヤーメッシュ」の獣害対策が効果を上げており、球根が掘り返されるなどの被害もないまま順調に育っている。8日にはプロジェクト1年目の総仕上げとなるPR看板も現地に設置し、関係者らは6月ごろの初開花を心待ちにしている。
 かつて原谷地内鹿ケ瀬峠の熊野古道はササユリの群生地として知られ、道ゆく人の目を楽しませていたが、3、4年前には1、2本が咲くだけとなり、現在は絶滅してしまった。原因は、当初は心ないハイカーらが球根ごと掘って持っていったためと考えられていたが、近年イノシシが球根、シカが花を食い荒らすためだと分かってきた。こういった現状に語り部の会では、「何とかもう一度美しい光景を復活させよう」と思い立ち、昨年7月に復活プロジェクトを始動。募金を集めるとともに、県から地域・ひと・まちづくり補助事業で48万3000円、町から25万8000円の補助金を受けて、12月までに自然散策公園(古道公園)で球根800個の植栽を完了させた。さらにイノシシやシカの被害を防ぐため、それぞれの植栽場所に縦2㍍、横1㍍のワイヤーメッシュ(1マス10センチ)を2つ並べて設置した。
 現在同公園には、イノシシなどが侵入してきた足跡が残っているが、いまのところワイヤーメッシュをかぶせた植栽場所には踏み込んできた形跡がなく、球根は無事。試行錯誤の中での対策だが、ワイヤーメッシュを10㌢程度浮かせて設置しており、イノシシなどが警戒しているとみられる。
 PR看板は同公園周辺の熊野古道沿い10カ所に設置。高さ1・5㍍、幅0・5㍍で、旧家の床板の廃材を利用して作っており、ササユリの写真と一緒に「ささゆり復活・再生プロジェクト もう一度 清楚(せいそ) 可憐(かれん) 馥郁(ふくいく)な香りに出逢いたい」などの言葉が書かれたラミネート製のシートを張っている。杉村さんは「地元の小中学生やボランティアら多くの協力で予定より早く進められました。募金にも本当に感謝。子どもたちも開花を楽しみにしており、このまま順調に育ってくれれば」と期待している。開花時期の6月には何かイベントも企画していく。