巨大地震の発生に備え、御坊市名屋東・西地区の女性が防災女性の会(龍田壽会長、会員31人)を設立、2日に市役所を訪れて柏木征夫市長に報告した。日高川河口が近いため大きな津波被害が心配される地域で、女性の視点から犠牲者ゼロを目指して活動するのが目的。この日は地元への避難タワー建設や下川の橋の強度調査なども要望した。市内で女性の自主防災組織は初めて。
 龍田会長らは「主婦らが2、3年前から防災頭巾を作ったり、避難路を考えたりしており、今回組織として立ち上げることにしました。地元には自主防災組織もありますが、女性の目から見て何か取り組めることがあると考えています。今後、名新地区全体で会員を増やしていきます」と設立の経緯などを説明。さらに「住民にアンケートを取ったところ、足の悪い人や高齢者がどこまで避難できるのかが心配ということでした。薗に避難タワーが建設されますが、そういった人は距離的に薗まで逃げるのは困難です。足が悪いからと言って普段の訓練に参加できない人もいます。もし昼間に地震が発生したら若い人や男性はみんな仕事に出て地元にはおらず、助けてくれる人もいません。いまなら自宅でお経をあげているのが精いっぱいという状況です。名屋地区にも津波避難タワーを建設してください。命さえ助かれば何とかなります」と訴えた。また、「下川の橋が地震で崩れるのではないかという心配の声もあります。対策を取ってください」と要望。二階俊博代議士秘書の二階俊樹さんも同席し、設立趣旨などを補足した。
 柏木市長は「一番心配している地域で、こういった組織ができることは大変ありがたい。御坊市のお手本になる組織として活躍してほしい」と激励。「避難対策としては原則車の利用を禁止し、緊急指定車で避難弱者を乗せて逃げられないか研究している。その場合、障害となるのは渋滞や電柱の倒壊などで、専門家に意見を聞きながら避難計画も策定している。とにかく全員が避難できるよう、1人1人をどうするか、行政の課題として取り組む」と約束した。避難タワーについては「それもいいが、あまり固執すると想定外が怖い。ただ、例えば日高川の堤防を利用して高台にできるのかなど技術的な検討も行っている。そういったことを模索しながらよりベターな環境をつくりたい」などと、人工の高台整備に含みを持たせた。下川の橋については「現在、地震に対する強度があるのかを調査している」と説明した。
 東日本大震災以降、トイレや着替え場所など、女性のプライバシーを考えた避難所運営が課題となっており、市では平成24年度事業で「女性だけの防災教室」を開いた経緯がある。
 現在、市内の自主防災組織は33団体あり、組織率は約60%となっている。防災女性の会は既存の防災組織とは別枠で市の組織登録を受けた。