日高川町議会6月定例会は16日再開。市木久雄町長の一般質問の答弁の中で、町からイノシシやシカの捕獲報奨金をだまし取ったとして書類送検されている財団法人ふるさと振興公社元嘱託職員の男性が、県警での供述とは一転、町との話し合いで「不正はまったくしていない」と無実を主張していることが分かった。町は、この男性から報奨金の返還を求める方針を固めていたが、難航する可能性が出てきた。
 元嘱託職員の男性(3月5日に解雇)は、虚偽の書類申請で町から10万5000円を不正にだまし取ったとして、3月24日に書類送検されている。現在のところ、起訴か不起訴か確定していない。県警の捜査で被害が裏付けされたのはこの7件の容疑だが、男性は県警に「100件以上はやった」と供述。これを受け町では10万5000円のほか、この男性が関わったすべての報奨金の返還を求める方針で、議会でも百条委員会を設置し、関係者に話を聴くなどして事件の全容解明に努めている。
 この事件について質問したのは入口誠議員。「被害者である町のトップである町長が考えを町民の皆さまに話すことも大事。7件以外にももっと多くの詐欺をしているのではないかという報道がほとんど。詐欺事件についての内容、原因、今後の対処法など聞きたい」と質問。これに対し、市木町長は「5月28日に本人と報奨金の返還について話し合いを持ったところ、〝不正はしていない。無実である〟と、県警の発表とはまったく違った主張をされた。裁判で有罪が確定したわけでもなく、本人が無実を主張している以上、現段階で報奨金の返還請求を進めていくことができない。今後の検察庁の対応を見守るとともに、裁判所の判断が出た段階で対応を判断する必要がある。時間を要することになる」と回答。入口議員は再質問で「警察での供述を全面否定された。想像もつかない回答。それに夏場に捕獲数が多いのもおかしい」と驚きをあらわにし、市木町長は「本人が何も悪いことをしていないと言っている。手の平を返したような話だ。夏場に捕獲数が多いのも数字的に不自然であると思うが、警察がいろいろ調査した結果なので、現段階ではこの調査結果を信用するしかない」と述べた。入口議員は「否定されている以上は、司法の判断を待つしかない。ただ町民の皆さまの関心も高いので、できるだけ分かりやすく町民の皆さまに説明していただきたい」と求めた。
 元嘱託職員が無実を主張している以上、裁判の結果次第では、すべての報奨金どころか、警察で供述した10万5000円についても返還されない可能性が出てきた。