みなべ町から新宮市までのJRきのくに線駅舎でアートイベントを展開する「紀の国トレイナート2014」(同実行委員会主催)の一環で、15日から南部駅でも絵画の制作が始まった。地域の特産の梅をテーマに県内外のアーティスト約20人らが手がけ、秋ごろまでに完成させる。画家で実行委員長の廣本直子さん(38)は「芸術を通じて紀南地方の良さを広くアピールしていきたい」と話している。
 みなべ町から新宮市までの9市町にまたがる広域的な事業で、JRきのくに線の16~17駅を舞台に展開する。事業名に使われている「トレイナート」は「トレイン(列車)」と「アート(芸術)」を掛け合わせている。JR西日本などの協力で実施している。すでに紀伊新庄駅(田辺市)の構内の壁には白浜町出身で千葉県在住の画家、榊貴美さん(31)が黒色で描いた人と動物を描いた作品が完成。黒い部分は伝言板として使用できる。
 紀南への始発駅となる南部駅では、国内外の作家や地元のアーティストが構内の跨線橋(こせんきょう)の壁面に制作。約10㍍区間の両側に、梅をテーマにした絵画が並ぶ。
 同駅での制作活動初日となった15日には、埼玉県で木版画を中心に芸術活動している中西静香さん(34)が1辺1.6㍍の正方形の区画に色落ちしにくい特殊な絵の具を使って梅の花を描いた。今後も多くの作家が訪れて作品を仕上げる。このほか、白浜駅ではペンギンの看板を設置し、観光客らが一緒に写真を撮れるようにする試みや、地元の子どもたちと一緒に作品を描くことなどを企画しているという。廣本委員長は「熊野の歴史やきれいな海岸の風景などで、紀南地方のよさをアピールしていきたい。今回の活動を通じ、市町村の垣根を越えて人々の交流につながるきっかけになれば」と話している。