美浜町で1日、県の避難所運営リーダー養成講座が開かれ、地域の自主防災会の役員ら約40人が参加。避難者情報等が書かれたカードを使う避難所運営ゲーム、HUGを体験し、災害発生直後、小学校に設置された避難所の運営を図上演習した。続々と押し寄せる避難者、救援物資等をいかにスムーズに、全体のストレスを抑えながら配置するか。素早い判断と実行が求められ、高齢者や病人への対応に頭を悩ませていた。
 HUG(避難所・運営・ゲーム)は、年齢や性別、障害や病気の有無、負傷程度などが記入されたカードを避難者に見立て、体育館や教室、グラウンドの平面図に収容、配置していくシミュレーションゲーム。平成19年に静岡県が開発し、東日本大震災以降、全国の自治体などが避難所運営のリーダー養成に活用している。和歌山県も本年度以降、県内全30市町村で養成講座を計画しており、美浜町はそのトップを切って各地域の自主防災会役員、役場職員らが参加した。
 ゲームは7人ずつ6つの班に分かれて行い、避難所の小学校に4つの地区から住民が避難してくるという想定。1人は避難者等の情報カードを読み上げるコントローラー、あとの6人はそれに対応する運営者となり、体育館の平面図に通路をつくり、居住スペースを区切ってゲームがスタートした。
 「家族5人で車で来た。持参したテントで寝起きしたい」「家族4人の世帯主が糖尿病、長男はひきこもり、犬を連れている」などという避難者情報が読み上げられ、避難者の収容先は居住地域を基本としながらも、ペットを連れていたり病気やけがもあったりで、どの避難者もすんなり行き先が決まらない。なかには「たばこを吸いたいがどこで吸えばいいか」「テレビ局が避難者のインタビューをしたいといっている」など、ちょっとわがままな要望もあり、容赦なく押し寄せる情報に頭が混乱するリーダー役の人もいた。
 終了後、20代の男性役場職員は「家族で避難してくるケースが多く、体育館の同じスペースに子どもが多くなると、騒いでやかましくなると思ったので、うちの班はなるべく子どもが偏らないよう配置しました」といい、別の班の60代の主婦は「両親を地震で失った幼い兄弟を近所の人が連れてきたけど、この場合、他の家族のそばに置いてあげた方がいいのか、逆に子どものいないグループに入れてあげた方がいいのか悩みました」と疲れた表情。
 最後に、指導役の神戸大学社会科学系教育研究府、紅谷昇平特命准教授が演習を振り返り、「いろんな情報、避難者の対応に正解はありません。運営者はその都度悩みながら、100点の対応を目指すのではなく、80点でもいいからテンポよく処理していくことが大切。また、わがままな要望には『無理だ』『あとにしてくれ』と毅然と断ることも必要です」と総括した。