虚偽の書類申請で日高川町からイノシシやシカの捕獲報奨金をだまし取ったとして、同町の財団法人ふるさと振興公社、元嘱託職員の男性(55)が詐欺容疑で書類送検された事件を受け、町議会は26日に全員協議会を開会。百条委員会にあたる「有害鳥獣捕獲報奨金の不正受給等に関する調査特別委員会」の設置に向けて、28日午前9時から臨時会を開くことを決めた。元嘱託職員は県警の捜査で今回被害が裏付けされた7件の容疑以外にも「100件以上はやった」と供述しており、委員会では関係者に話を聞くなどして事件の全容解明に迫る方針。
 特別委員会では関係者の出頭や証言、記録の提出などが請求でき、正当な理由なく関係者が出頭、証言、記録の提出を拒否した場合、禁固や罰金などに処すことができる。臨時会では、「有害鳥獣捕獲報奨金の不正受給等の調査に関する決議」を審議、可決すれば委員会が設置される。
 この日の全員協議会で市木久雄町長は事件の経緯を説明し、ふるさと振興公社理事長の野手俊明公室長とともに陳謝。元嘱託職員に対しては「弁護士と相談した上で10万5000円を返金、さらに7件以外の不正受給についても、本人から不正の内容や手口など話を聞いて、可能な限り報奨金の返還の手続きを取っていきたい。すべての申請取り下げがベターだと考えている」と述べた。
 説明を受けた議員からは事件の手口への疑問や他の人の関与を疑う声が上がった。「しっぽの信憑(ぴょう)性はどうなのか」と質問があったほか、「100件以上の不正は1人だけでするのは難しいと思う」、「ジビエ工房で何が行われていたのか。他の人も関わっていると思う。元嘱託職員以外の関係者や申請者にも聞くべき」との意見が出た。これに対し市木町長はしっぽについて「使い回していた疑念はある。どんな手口なのか本人に確認したい」と述べ、元嘱託職員以外の申請者への聞き取りについては「元嘱託職員に関与を聞くしか方法はない。鳥獣害対策は捕獲者との信頼関係で成り立っており、他の人については個人的に話を聞くことはできないので、聞き取りするならば申請者全員となるが時間がかかる」と難色を示した。
 書類送検された元嘱託職員(今月5日付で解雇)は、平成23年7月から事件の舞台となったジビエ工房紀州に勤務。平日午前8時半から午後5時半まで常勤で食肉の解体処理などに携わっていた。一方でイノシシやシカの捕獲も行い、平成23年度から25年度まで3年間で609頭を捕獲したとして913万5000円を受け取っている。ジビエ工房は昨年3月まで報奨金手続き(業務は元役場職員が担当)の窓口となっていたため、元嘱託職員も申請方法に精通していた。