「辛い入院生活と将来への不安でなかばうつ状態になっていましたが、主任看護師さんがわたしの手をそっとにぎって励ましてくれました。人の温かさにふれ、少しずつ元気を取り戻し、ケガもよくなっていきました」。御坊保健所らが募集していた「看護師さんありがとうメッセージ」の最優秀に選ばれた女性の体験談である。女性いわく、「手当てという言葉の意味をあらためて知りました」と。患者を思う慈愛に満ちた心は必ず相手に伝わる。緊張の連続であろう命の最前線、仕事は激務だろうが、これほどやりがいのある仕事もなかなかない。病気やケガで不安な患者の心に寄り添いながら仕事をこなす看護師さんには頭が下がる。
 そんな白衣の天使も、全国で約4万人足りていないといわれている。ただ、国家資格に合格している看護師は年間4万人以上。さらに資格を持っていながら働いていない人はおよそ50万人。それでも不足するのは離職率が高いから。男性看護師が増えてきたといっても圧倒的に女性が多く、妊娠・出産で離れざるを得ない、仕事のハードさと給料が見合わないなど理由はさまざま。同じ資格を持つなら、少しでも条件のいい職場に移るのも当然で、病院間に人数の格差が生まれているのも現実のようだ。
 日高地方でも看護師不足は深刻で、病棟の一部閉鎖を余儀なくされた病院もある。来年4月に開校する日高看護専門学校に期待するのはもちろんだが、給料や勤務態勢の見直しなど、離職を減らす手立てなくして本当の解決はない。住民の命にかかわる問題だけに、行政を含めた地域全体での取り組みが必要だろう。患者を癒やす手当てがなくならないために。 (片)