高き屋にのぼりて見れば煙立つ...。仁徳天皇が高津宮からまちを見渡し、家々からかまどの煙が上がっているのを見て、民衆の生活が成り立っていることを喜んだ御製。天皇はその前に、家々から煙が立たないことに民衆の生活困窮を知り、3年間、税の徴収を免除したそうで、いま風にいえばニントクノミクスの成功例である。 
 1600年後の日本経済は、 アメリカの金融緩和の縮小予測に市場が揺さぶられ、株式から為替、円高から株安へと、株価の乱高下が止まらない。安倍政権はとっておきの成長戦略を小出しにしながらも、株価の暴落が続き、マスコミから批判を浴び始めている。参院選を前に、アベノミクスが正念場を迎えている。
 国家の安定、国民生活の安定には、何よりも優先されるのが経済であり、経済の発展なくして国民の幸せはない。アラブの春が吹き荒れた中東、イランでは穏健派のロハニ師が次の大統領に決まった。国民のほとんどが、イスラム全体では少数のシーア派。反欧米の対外強硬路線が続いていたが、核開発を巡る経済制裁によるインフレが国民生活を圧迫。新リーダーの政策に注目が集まる。
 内戦が泥沼化しているシリアにも干渉、自国と同様、バーレーンやキリスト教のグルジアにまで入り込み、改革を押し広げようとしているイランだが、日本とは出光興産の日章丸事件が象徴するように、互いに国家の復興と国民生活の安定のために、大国とメジャーに対抗した歴史があり、伝統的に友好な関係が続いてきた。
 ロハニ師は、政策の最優先課題に経済再生を掲げる。イランやシリアを巡り対立するサミット参加国も、自国の家々に煙が立つ光景が見える首脳は何人いるのだろうか。      (静)