東日本大震災以降、いろんな形で行われている防災訓練には、実際に参加してみないと分からないことが多い。取材や自身の体験からもいろいろ感じる。
 海岸線に設置が進められている防潮扉。何年か前の地元の訓練に参加した時に閉めるのを手伝ったが、なかなか簡単にはいかない。扉を引っ張るだけではないので、万一の際にその場にいて閉めようとしたところでスムーズに作業できないと思った。水門にしてもそうだ。地元の川に水門が設置(遠隔操作対応)されているのは知っているが、果たして自分1人で閉鎖できるだろうか。
 昨年、中学生の津波避難訓練を取材の際、生徒たちとそのルートを一緒に走った。学校から高台まで1㌔もない。頭で分かっているのは「たいした距離ではない」。津波が押し寄せるまで30分程度、大の大人だし、らくらく走りきれると思っていたが、日ごろの運動不足がたたってか全力で走りきるのは無理だった。海岸線の小中学校に配布されているライフジャケットは頭からかぶる際に眼鏡が落ちるし、留め具があって装着に案外時間がかかる。ジャケットなら脱げる可能性もあって安全を考慮してのつくりなのだろうが、繰り返しの装着訓練が必要だろう。防災無線の通信訓練では、肝心の無線が小学校のどの場所にあるのか探すのにひと苦労。無線の使用にしても結局、携帯電話で経験のある人に問い合わせなければならなかった。いざという時に不安を残す。
 訓練の一番大事な部分は役場で取りまとめるデータや問題点ではなく、参加した人がどう感じて災害時にどう生かすかである。いま、訓練参加の機会は多い。特に海岸線の住民は、必ず現場に行ってもらいたい。(賀)