「近くに安い施設ができて経営が大変」と嘆く旅館へ宿泊。夕食にはその土地ならではのものも並んではいるが、定番の「エビフライ」もあった。客は「申し訳ないが、きょうの残飯をバケツへ入れておいて後で見せてほしい」と頼んだ。片付けが終わって残飯を確認しにいくと「エビフライ」が多く残っていたという。
 客とはフリーライターでテレビのコメンテーターなどでもおなじみ、ヤマケンこと山本健治さん。日高郡商工会広域協議会の新春講演会に講師として招かれ、前出のような話を紹介してくれた。いいたいことを整理すると、せっかくその地域のおいしいものを食べに来ている客に、いくら定番だからといってエビフライを提供しても喜ばれない。何も考えずに出すぐらいならその分、価格を安くできるし、何よりも客が欲するもの、満足するものでおもてなしできないようでは次も宿泊してくれるリピーターにはならないといったところだと思う。
 大阪に友人がいる。夏に遊びに来たときに新鮮な魚介類を振る舞うと「おいしい」と大喜び。年末に日高川町のミカンを送ると「むちゃくちゃ甘い」とメールが返ってきた。高価なものをとあれこれ考えるより、和歌山らしいもの。それに特化させた方が、相手も喜んでくれると自身の経験にもある。
 残飯になるようなものを提供していても客は増えない。客のことをよく知らなければ、商売を成功させるのは難しい。田舎は田舎でいい。でも、和歌山でしか味わえないもの、体験できないようなこと。少しでもこんな考えを持って投資の仕方も検討する必要があるのでは。素晴らしい観光資源はあるのだから最大限に生かす方法が求められる。   (賀)