新年号に掲載の近田拓矢選手(日高川町小熊出身)。今春のセンバツ出場が確実な大阪桐蔭の不動の4番、一塁手だ。昨年暮れに取材した時、印象に残る言葉があった。「自分がアピールできるのはパワーしかない」。
 守備や走力には自信がない。だから、パワーを生かした打力を伸ばす。昨年春夏甲子園連覇の強豪校で激しい競争の中、レギュラーになるためにはどうすればいいのかを考えた結果、そう結論付けたという。いくら努力をしても結果が出せないならばその部分には多少目をつむり、長所でカバーする。長所を際立たせるのも並大抵の努力ではできないことだが、それを実践して成長を遂げたというのだから感心した。
 世の中には勉強に、仕事に一生懸命頑張っている人たちは、上から目線で評価する人たちが思うよりずっとたくさんいる。ただ、悲しいかな結果が出なければ認めてはもらえない。第三者から見れば「無駄な頑張り」が多いといえるのだろう。ならば、結果が出るためにはどうすればいいのかよく考える必要がある。自分自身を見つめ直し、人より劣る部分を勝るところでカバーするのも成功への道の一つ。そんな逆転の発想に近い考え方に触れさせてもらえた。
 「人は人によりて人となる」。こんな言葉もある。過去には「失敗は、まけ(敗)を失うと書く」などと、チャレンジの大切さを教えてくれた町づくりに携わる人がおり、勇気づけられた。近田選手をはじめ、たくさんの人と取材で接し、一つの言葉がやる気を一気に高めてくれることも本当に多い。まさに人は人と接することで磨かれる。ことしも出会いを大切に現場で多くの人たちと向き合い、自分を成長させる一年でありたい。  (賀)