内閣府の南海トラフの巨大地震モデル検討会が公表した津波に伴う浸水エリアの新たな推計で、市内では湯川町にある丸山のふもとまで津波が押し寄せたり、日高川河口から逆流した津波が野口まで到達したり、これまで想定されていなかった地域も浸水することが分かった。あらためて防災対策や各地域の取り組みの見直しが必要なのはいうまでもなく、危機意識も一層高めなければならない。
 しかし、数値だけにびっくりして衝撃を受けたり、むやみに不安を抱いたりするのではなく、正しい認識を持つことも大切である。国は新推計について最新の科学的知見に基づき、発生しうる最大クラスの地震、津波を推計したとしているが、「発生頻度は極めて低い」と補足。さらに「次に発生する地震と津波が最大クラスであるというものではなく、最大クラスに比べ規模が小さい地震と津波が発生する可能性が高い」としている。
 つまりどういうことかというと、今回の新推計を見て「こんなところまで津波が来るようなら避難しても無駄」と考えて、避難すること自体をあきらめてしまうことへの注意を呼びかけている。最大クラスに比べて規模が小さい津波が発生する可能性が高いにもかかわらず、避難をあきらめることで本来なら助かる命を落としかねないからだ。
 だから「あきらめ」は最も避けたい考え方。あくまで地震が発生したら「まず逃げる」という意識を地域住民1人1人がしっかり持つことが重要である。確かに新推計での避難の条件は厳しくなるが、想定できることに対策が立てられないことはないはずだ。国が言う「正しく恐れて」を理解して、もしもの場合に備えよう。    (吉)