御坊文化財研究会の総会記念講演会を聴講した。 鈴鹿大学前講師の笠原正夫さんが近世 (16世紀末から約300年間) の日高地方の産業について講演。 郷土のことなのに今まで知らなかったことばかりで、 大変興味深かった
 ◆日高の主な産業は、 廻船業と各種特産品。 学生時代、 日本史で 「菱垣廻船・樽廻船」 をセットで習ったのは覚えているが、 当時の日本経済の大動脈というべきその2大廻船の中核を担ったのが、 日高郡を中心とした紀州廻船だったとは知らなかった。 紀州人は特に操船技術に優れていたという。 漁業でも、 日高地方は他地方に比べて実に多彩な漁具が使われている。 網だけで16種類。 当地方の海は日の岬を境目として潮流が変わり、 漁には技術を要したらしい。 今も紀北のスーパーなどで 「地もの」 として売られている魚は圧倒的に日高地方が多いと、 講師の笠原さんは言われていた
 ◆もう一つ、 特産品で興味深かった話は 「綛 (かせ) 糸」。 日高の綛はやわらかく色つやもよく、 京都で名が通っていると 「紀伊国名所図会」 にも記されたよい品だった。 ところが宝暦年間、 従来の綛仲間以外の商人が買い占めた粗悪品が 「日高綛」 として出回ってしまい、 名声は失われる。 現代の各種産業にも通じる教訓のある話だ。 品質保持はもちろん、 ブランドイメージを守るためにも細心の注意を払わなければならない
 
 ◆歴史には明の部分も暗の部分もある。 バランスよく学ぶことは大切だが、 郷土の誇るべき歴史を積極的に知ることには大きな意義がある。 だれでも、 ふるさとの自然と文化の中で心を育まれてきた。 郷土を愛する心は自身の礎となり、 他者への理解の始まりともなる。(里)