靴下が破れにくくなったと思ったことはないでしょうか。もちろんその生産地や商品にもよるのだが、以前より指の先に穴が開いて捨てる機会が確実に減った。おしゃれな人は別にして、自分自身は目に見えないところまで気を回すほどの柄でもなく、はけなくなるまで何足かでローテーションを守り続けている。中4、5日ぐらいで、何年も使えているような気がする。
 靴下等の製造販売会社に勤務する、いとこがいる。先日、一緒に酒を飲みながら前出の話で盛り上がった。
 靴下を国内だけで売ると仮定した場合、購入する人の数は決まっている。限られた数の中で、同業者と売り上げを競い合う。「破れない」、品質のいい商品を製造すればするほど購入のサイクルが下がり、売り上げも右肩下がり。大量生産、大量消費の発展途上国ならいいが、日本は成熟した社会であり、さらに「もったいないの文化」もある。それでも破れない商品の製造を追求する。商品がよくなれば、商品が売れにくい。何ともいえないジレンマと戦うのだ。
 車や電化製品も同じジレンマを抱える。壊れにくい製品を製造すればするほど買い替えのサイクルが長期になり、自らの売り上げに影響を及ぼす。近年の液晶テレビをみても分かると思う。普及すれば市場は急速に縮む。だが、どこかの国のように「もの」が悪かろうがお構いなし、安ければいいと自らの利益に固執する方が近い将来に行き詰まるのではないだろうか。まず消費者のためにと頑張る日本企業の方が頼もしく、大手電機メーカーをはじめ日本の製造業は大ピンチとの報道があとを絶たない状況でも、ジレンマの先に必ず復活があると期待を持っている。   (賀)