学生寮の鰤耀(ぶりき)に集まる高専生ら。入居の学生以外も利用している

 印南町印南の商店街に今春、和歌山高専生専用の学生寮「鰤耀(ぶりき)」がオープンした。現在5人の学生が入居し、それぞれの目標や夢を追いかけながら共同生活を送っている。商店街周辺に住む人たちからは、食料の差し入れや支援の動きもみられ、寮を中心に商店街の新たなコミュニティが広がりつつある。

 寮を運営しているのは、同町で農園を営むカワバタファーム。昨年、商店街にある2階建て空き家を改装し、4月から高専生の入居がスタートした。ただ宿を貸すだけではなく、農園のアルバイトとして働く機会を与えたり、農園の川端宝子さん(49)の知人の経営者を招いた交流会も開かれるなど、学生が普段できない体験も提供している。

 入居しているのは、環境都市工学科1人と知能機械工学科、生物応用化学科が2人ずつ。知能機械工学科3年の﨑山圭佑さん(17)は、ロケット工学の研究でアメリカの留学プログラムに参加することが決まっている。環境都市工学科5年の生駒高成さん(20)は、ソフトテニスで全国大会に出場。いまは体作りのためグルテンフリーの生活を実践しているという。

 商店街の人たちからは「何か応援してあげたい」と差し入れをもらうこともよくある。さらに応援の輪が広がればと、川端さんは農園で作った野菜や卵の無人販売所を寮の軒先に設置することを計画。今月6日からオープンし、売り上げは高専生の生活費や留学資金に充てたいと考えている。

 寮の名前の鰤耀は、出世魚のブリにちなんでつけた。社会で出世し、印南から羽ばたいていってほしいという願いが込められている。川端さんは「地域の皆さんからのありがたい応援を受け、立派な社会人へ成長していってもらいたいです」と期待を寄せている。