つい2カ月前の話。兵庫県の斎藤知事が職員へのパワハラなどいくつかの疑惑の追及を受け、議会や日本維新の会から辞職を求められるもそれを拒み、「議会にもご理解をいただきながら、県政を前に進めたい」と続投の考えを示した。
いま、当時のテレビニュースを振り返ると、BGMとあきれた調子のナレーション、字幕、さらに知事を厳しく批判する大学教授のコメントをかぶせた編集は、明らかな作為、もっといえば悪意を感じる。
すべてがそうとはいえないが、感覚的には総じて同じ風潮だった。批判の嵐のなか、何を聞かれても表情を変えず、虚ろな目で念仏のように「県民の負託に応えたい」と繰り返す知事を見ながら、自分も正直、「この人、本当に大丈夫なのか」と思った。
少々口は悪いが真っすぐな印象のお笑い芸人、千原せいじさんも同じ感覚だったようで、その際に知事をディスッた自身のユーチューブのコメントに対し、選挙後、謝罪を求める声が殺到しているという。
これにせいじさんは「俺がなんで謝罪せなあかんねん。俺が謝ってほしいわ。テレビ局とか雑誌に。こっちは大恥かいとんねん」とし、謝りはしないが、「俺たちバカは薄っぺらい正義感で発言しないと反省はしている」と話していた。
新聞、テレビのオールドメディアに対し、告示後のユーチューブやSNSの情報が選挙の潮目を変えた。まさかの斎藤氏の再選という結果に前者は釈然とせず、「真偽不明の投稿に踊らされた民意は民主主義を危うくする」と主張する大手新聞も。
県民は怪しいネット情報に踊らされたのか、あるいはテレビや新聞には県民が求める情報がなかったのか。まだまだ目がはなせない。(静)