議論する独裁者、大阪府知事の橋下徹氏(42)が大阪市長選に出馬する。知事から市長へ、前代未聞の転身は、現職の平松邦夫氏(62)を相手に実質の一騎打ち。関西のテレビ、新聞は当面、これでネタに困ることはないだろう。隣の和歌山県民としても大いに注目。知事選にも府内30人の首長が推すという池田市長、倉田薫氏(63)が名乗りを上げ、ダブル選は異様なまでの盛り上がりをみせている。
 「あなたがたは破産会社の従業員です」。財政再建のため、人件費はもちろん、医療、福祉、文化などにも容赦なくメスを入れ、市町村補助の減額には涙を流して理解を求めた。また、霞が関に対しては国直轄事業の地方負担を「ぼったくりバーの請求書」とこき下ろし、庁内にも国に対しても過激な言葉でかみつき、ときには同じ関西の大先輩の知事にも口げんかのように議論を挑んだ。
 圧倒的な人気を背に、府民の感覚とかけ離れた行政と政治に生来の「いらち」が頂点に達した。地域政党を立ち上げ、議会を支配し、合法的に反対派を潰しにかかる手法に出た。「いまの日本の政治に必要なのは独裁だ」。年上の平松氏からすれば、内心、「このガキほんま、なめとったら承知せんぞ」というところか。大阪都構想を最大の争点に、どんな過激な舌戦になるのか、同時代に生きる者としてじっくり観戦させてもらおう。
 常に目標を定め、全力で取り組み、次々と新しいことに挑み、戦い続けた。賛否はあるが、このリーダーとしての行動力は高く評価したい。「民主主義のルールに基づいた独裁、それこそが本当の政治」。地方を変え、日本を動かすため、橋下知事の信念はどこまで支持を得られるか。      (静)