印南町の稲原駅がもうすぐ改修工事に入ることを17日付で紹介した。同駅は1930年(昭和5)年に開業。駅舎は当時のまま残っていたが、老朽化もあり94年の時を経てリニューアルされる。

 日高地方の駅舎改修は稲原駅だけでなく、由良駅も、周辺の再整備を含め行われる。田舎ローカル線の駅舎も、電車が来るまでの単なる待合スペースから地域交流の場としての役割が期待されているというわけだ。といいたいところだが、和佐駅のように駅舎を取り壊し、切ったパイプを地中に半分埋め込んだ必要最小限のコストで収められた駅舎もある。これはこれで面白い。

 駅は地域の玄関口どもいえる。電車の利用者数減少が課題となっている今、駅は電車に乗る目的だけで訪れる建物になってしまうのはとてももったいない。きのくに線沿線の各地では、地域活性化のためさまざまな取り組みが始まっている。

 有田市の紀伊宮原、箕島、初島駅では、各駅周辺で飲食や雑貨などのマルシェが出店し、3駅の間を電車で移動しましょうという「きのくに駅マルシェ」というイベントが定期的に開催され、賑わいを見せている。

 紀南でも、2014年から21年まで駅舎をアートで彩る「紀の国トレイナート」が開催されていたり、和歌山大学の研究室による沿線地域の活性化について考えるシンポジウムが開かれている。駅と地域の一体となった活性化を図る動きが各所で展開されているのだ。

 あいだに挟まれた日高地方はというと、活発な取り組みは両地域に比べて見えていないように思う。沿線は海あり山ありで資源はいっぱい。今後、両地域に負けない取り組みが出てきてほしいとひそかに願っている。(鞘)