
基本的にコーヒーを飲むことが多い私。ココアを飲んだ記憶はここ数年ないと思いますが。温かいココアが飲みたくなる気持ちとはどんな気持ちでしょうか。
物語 主人公の僕(ワタル)は2年前からマーブルカフェで働いていた。そこで、木曜日に決まってホットココアを注文する女性に片思いしていた。
2年前、僕は高校を卒業してから勤めていたレストランチェーンでリストラにあい、職を失ってしまった。職探しの日々だったが、ハローワークからの帰り道に「マーブルカフェ」を見つけ、そこに立ち寄る。アルバイト募集の張り紙を見つけた僕は、マスターに面接をお願いした。マスターは僕を見て、5秒ほど考えた後に正社員で雇うことを決め、それからすぐに、僕はマーブルカフェの雇われ店長となった。その後、店を任された僕は必死で働き、常連客が増えていく事にも満足感を感じていた。そして、常連客の一人である栗色の髪の聡明なお客、通称〝ココアさん〟に恋をしていた。僕は木曜日に、とびっきりおいしいココアを彼女に捧げるのだが…。
本書は、東京とシドニーを舞台にした12編の連作短編集で、主人公がそれぞれ違います。各物語が絶妙にリンクしており、全ての関係を理解しようとすると少し複雑かもしれませんが、物語自体は読みやすいです。青山美智子さんの作品はどれも色彩の感覚がきれいで、読んでいると色が見えてくるような気がします。
物語では登場人物の何気ない言葉や行動で不意に誰かが救われたりします。ココアをこぼしたり、ネイルを落とし忘れたり、助けた方は何も事情を知らないのですが、見えない思いやりや温かい心遣いが描かれています。多かれ少なかれ、誰もが誰かにとって救いになる存在なのかもしれません。そう思うとなんだか心が温かくなって、ホッとする飲み物が飲みたくなってきます。(将)


