印南町防災講演会が4日、印南町体育センターで開かれ、東日本大震災の「釜石の奇跡」に携わったことで有名な東京大学大学院特任教授の片田敏孝さんが津波避難について講演。これまでは行政に任せきりの防災だったが、これからは住民主体の防災に転換が必要だとし、避難するかは自分で判断することや、大切な人のことを思いやり率先して避難することの大切さを訴えた。

会場いっぱいの約700人が来場。片田教授は「災害に向かい合う自分、そして地域はどうあるべきか」をテーマに話した。
7月30日のカムチャツカ地震に触れ、「遠地地震では津波のピンポイント予想が困難で、津波高が大げさだと感じている人が多いかもしれない。逃げずに『ほら大丈夫だった』と思う人は本当に来る津波でも必ず逃げていない。『今回も大丈夫だった』と逃げ続ける人は本当に来る津波でも逃げ切れる。大げさだと思っても逃げ続けることが大切だ」と強調した。その上で、近い将来高い確率で発生するとされる南海トラフ地震では津波などで約30万人が犠牲になると想定されているが、早期避難を実践すれば死者を7割減らせることを紹介。「避難は行政や専門家にしてもらうことではない。自身が自分のこととして行動すべきこと」と、これまでのように行政に任せきりの防災ではなく、住民主体への転換を求め、「行政サービスから行政サポートへ。住民が動くことを行政がサポートするのが日本の防災の新しい形」と訴えた。
住民の行動変容を促すには、「家族や地域における命のつながりや思い合う心」とし、東日本大震災の実例として、一度避難した消防団員がおじいちゃんを助けに、母親が子どもを探しに戻って命を落としたことを説明。「防災意識が低かったのではない。大切な人のことを思うのは自然なこと。だからこそ、各家庭でお互いを信頼してそれぞれが避難することを話し合ってほしい。大事な人、命のつながりの中で防災を考えることで実効性が出る」と意識を変えるよう呼びかけた。


