
直木賞受賞第一作である。
紫陽花が好き、そこに降る雨はもっと好き。雨は、なぜ降るのか? その雨をじっと見ていたい。そんな少女時代を過ごした猿橋勝子。日本における女性科学者の草分けである。
その彼女の生涯を描いたのが本作。
猿橋勝子は医師を目指していた。東京女子医専(現東京女子医大)を受験するが、創設者の吉岡彌生に面接で小馬鹿にされた。これがきっかけで勝子は創立まもない帝国女子理学専門学校(現東邦大学)へ入学する。卒業後、気象研究所で分析化学の専門家として働きだした。
ビキニで水爆実験があった。日本の漁船・第五福竜丸が被爆する。気象研究所で研究していた勝子は大気に含まれる原子量を測定する第一人者で第五福竜丸の被爆報告を世界原子力学会で行うことになった。まだまだ未熟だと考えていた勝子は逡巡した。しかし、平塚らいてう(女性活躍の啓蒙者)の後押しで勝子は世界学会の檜舞台に立つことになった。
ビキニでの水爆実験のあと大国は次々と核実験を繰り返す。そのため太平洋には汚染された海洋が満ち溢れた。その測定を米国と日本が行うことになった。代表は米国海洋研究所のフォルサム博士と日本の代表は勝子である。それは米国と日本の分析力の戦いへと進展する。
分析結果は共同研究として世界に公表され、米国は世界に先駆けて大気圏内、宇宙空間、水中での核実験の中止を決め、部分的核実験禁止条約へと繋がっていく。
後に猿橋勝子の業績を称えた猿橋賞が設けられるきっかけともなった出来事であった。(秀)


