歌舞伎の世界の血筋と本筋の生きざまを描き、6月6日公開から2カ月が経過したいまも全国の劇場で大入り満員が続いている映画「国宝」。劇場にはリピーター、関西各地のロケ地には多くの聖地巡りのファンが押し寄せるなか、主人公の吉沢亮と横浜流星が2人で舞う「京鹿子娘二人道成寺(きょうがのこむすめににんどうじょうじ)」の舞台、日高川町鐘巻の道成寺にも映画を見て訪れる参拝客が増えている。

古典芸能の聖地として再び注目を集めている日高川町の道成寺

 「国宝」は、「フラガール」「悪人」などの李相日監督が吉田修一の同名小説を映画化。任侠(にんきょう)の家に生まれながら歌舞伎役者として芸の道に人生を捧げた男の一生を描いた人間ドラマで、封切りと同時に大ヒット。クチコミで評判が広まり、今月12日現在で観客動員は677万人、興行収入が95億円を突破し、100億円の大台も秒読みとなっている。

 道成寺物歌舞伎の「京鹿子娘二人道成寺」のあらすじは、白拍子(しらびょうし)の花子が道成寺の鐘供養に訪れ、舞を次々に披露するうちに鐘に飛び込み、蛇体となって現れるというストリーで、恋にまつわるさまざまな女性の姿を表現している。

 作品には、稀代の女形の立花喜久雄を演じる吉沢亮と、上方歌舞伎名門の御曹司役の横浜流星が「京鹿子娘二人道成寺」を踊る場面が登場するほか、ポスターにも「京鹿子娘二人道成寺」にちなんだ写真が使われている。道成寺では、県内外から「国宝を見た」という訪問者が後を絶たず、映画に感動して道成寺へ行きたくなったという地元の人も多い。

 御坊市の女性(51)は「和歌山市の映画館まで行って3回も見ました。音楽や映像がきれいでとてもよかったです。いままで何回も道成寺には行ったことがありますが、この映画を見て、あらためて道成寺へ行きました」、日高町の男性(59)も「3時間という上映時間の長さをまったく感じさせない面白さ。歌舞伎界の厳しさ、人間ドラマも見ごたえがあり、二人道成寺を舞う2人の迫真の演技を見て、古典芸能の聖地である道成寺を見直しました」などと話していた。

 「国宝」は和歌山市のジストシネマ和歌山、イオンシネマ和歌山などで上映しており、9月5日からはジストシネマ御坊でも上映される。

 道成寺の小野俊成院主は「映画の『国宝』を通じて、歌舞伎や日本の古典芸能に興味を持ってもらえればと思います」と話している。