
夏休み=自然体験と連想して久しぶりに読んだ本であらためて感動をもらいました。「釣りキチ三平」で知られる著者の自伝エッセイです。
内容 著者は秋田県、奥羽山脈の山深い村で生まれ育った。町は遠く、学習漫画雑誌の発売日には、母を引っ張って雪をこぎながら片道5時間(!)かけて町の本屋を目指した。
小学生の時は戦後間もない、物のない時代。教材もろくになく、担任の川越先生は天気がいいと「表へ出ろーっ!」と皆を野外へ連れ出す。先生にかかると身の回りの植物も昆虫も、教材。工作の時間には巣箱を作り、理科の時間に裏山へ登って木にかける。体育の時間はマラソンからキノコ狩り。すべてが生きた勉強だった。
息づく豊かな自然を背景に語られる面白い逸話、心を打つ逸話の宝庫。特に幼い弟の死をつづった「百日咳」は、読むたび涙がこみあげます。夜に家で亡くなった弟を前に泣き伏す著者と妹に、母は毅然と言います。
「うろたえるでねえ! これが富雄の寿命と思え! そして富雄の最期の顔を一生忘れるでねえ! たった三つの小さな命だったけど 人が死ぬってことはこれほど悲しいことなんだ! 人間の命ってもんはこれほど重いものなんだ! そのことを忘れるでねえ!」
そして夜明け前に目覚めた著者は、涙にくれながら富雄のなきがらを抱きしめる母を見たのでした…。
本書からは、8編のエッセイが小・中・高校の国語や道徳の教科書の教材として採択されています。しかし決して「教科書的」ではない、生き生きと命が躍るような一冊です。(里)


