
今回紹介するのは、鴨崎暖炉「密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック」。2022年の第20回「このミステリーがすごい!大賞」文庫グランプリ受賞作だ。
物語の舞台は、「密室の不解証明は現場の不在証明と同等の価値がある」との判例によって、現場が密室であれば無罪が担保されるという架空の日本。ミステリー好きの主人公・葛白香澄(くずしろ・かすみ)は、幼なじみの夜月とともに、ミステリー作家が残したホテル「雪白館」に宿泊する。このホテルには、ナイフが刺さった人形を死体に見立てた密室の謎解き部屋があり、密室ファンに人気の場所となっている。
突如としてホテルに続く橋が焼き落とされ、館は陸の孤島に。そして、殺人事件が発生する。いわゆる“お約束”の展開だが、そこから先も次々に事件が起こり、そのすべてが密室というこだわりぶり。宿泊客の中には、かつて父を密室トリックで殺害したとされる中学時代の同級生・蜜村漆璃(みつむら・しつり)もおり、彼女が香澄を導くように謎を解き明かしていく。
とにかく密室トリックのオンパレードで、密室マニアにはたまらない。糸を使った複雑な仕掛けから、わかれば単純なものまで幅広い。トリックはイラスト付きで丁寧に解説されており、読者の理解を助けてくれる。
登場人物の名前も「メイドの迷路坂(めいろざか)」など、記憶に残りやすく工夫されているのも地味にありがたい。殺人の動機や背景はやや軽めだが、それを補って余りある密室への情熱。ストーリー性よりも、とにかく密室を楽しみたい読者に強く薦めたい一冊だ。(城)

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